年越を迎える12月31日には、日本伝統のさまざまな行事が行われます。各家庭でも、従来決まった大晦日の過ごし方や新年の迎え方があるでしょう。
それは日本中、地域によっては異なる部分もあるかもしれませんね。
日本では、大晦日に年越そばを食べるというのが習慣になっていますが、なぜ、年越そばを食べるのか、なぜ日本に伝わる麺として、うどんもあるのに、そばなのか。
また食べる時間帯はどの地域も同じなのか?など、今まで、特に気にもしてこなかったことが、実は説明できなかったということもありますよね。
年末に年越しそばを食べながら、家族に意味や由来をしっかり説明できると、ちょっと鼻高々かもしれません(^^)
今回は、年越そばについて、由来から、地域の違いなどについても、いろいろ調べてみました。
このページにはこんなことが書いてあります
大晦日に食べる年越そばってどんな意味があるのでしょうか
日本の文化となっている大晦日の年越しそば。
必ず食べるという人が大半だと思いますが、なぜ年越しそばを大晦日に食べなければいけないのか、意味を説明できる人は実は少ないのかもしれませんね。ここで、年越そばの歴史や由来、意味について知っておきましょう。

年越そばの歴史とは?いつ頃から日本の文化になったのでしょうか
年越そばは、江戸時代から定着している日本の文化となっています。
1814年の「大阪繁花風土記」に年越そばに関する記述があり、そのころには大阪では年越そばは市民の文化としてあったということがわかります。
江戸時代に商家では月末に三十日そばを食べていて、その習慣が大晦日だけに食べる年越そばになったといういわれがあるそうです。
年越しそばの由来にはこんな説があります
年越そばの由来についてはさまざまな説があります。
説1:鎌倉時代に、博多にある承天寺で、食べ物に困っていた町人に、年越にそば餅をふるまったそうです。(承天寺は宋からそばの作り方を日本に伝えた聖一国師が開山したといわれています)
「世直しそば」と称したそのそば餅を食べた人たちが、新年を迎えて、運が上向いてきたということが伝わり、大晦日に「運そば」を食べるという習慣が広がったということです。
説2:室町時代に、関東三長者の一人である増淵民部が毎年の大晦日に無病息災を祈り家人とそばがきを食べたのが始まりといわれています。
そばの実の形が、三角形なので、夫婦と子供の形として家族円満な象徴としてとらえられて、縁起がいいといわれていたということもあります。
年越そばがうどんではないのはなぜでしょうか
年越そばが定着していた江戸中期に、脚気が流行しており、栄養のあるそばを食べれば脚気にならないという説が伝わり、うどんよりそばを食べる人が多かったということです。
また、うどんよりも、そばの麺は切れやすいので、「一年の災いを断ち切って新しい年を迎える」という意味でも、大晦日に食べるのは、そばということにつながったようです。
江戸時代の書物「本朝食鑑」にもそばは腸の具合を良くすると書かれていたということから、大晦日にそばを食べることによって、体内を清めて新年を迎えていたといわれています。
年越そばにはどんな意味があるのでしょうか
年を越す大晦日にそばを食べることで、さまざまな意味を持っています。
新年に向けて、願いを込めて、年越そばを食べましょう!
その1
そばは麺の中で切れやすいので、今年起きた災いを来年に持ち越さないように、しっかり悪縁を切って、幸せな新年を迎えられるようにという願いがあります。
その2
そばは風雨に強く、風雨にさらされて倒れてしまっても、翌朝日に当たるとすぐに立ち直るという強さがあるということから、新年は健康を祈り、運が向上するようにという願いがあります。
その3
金銀細工師が金箔を伸ばしたり、金銀の粉を集めるのにそば粉を使っていたことから、金を集める縁起のある食べ物と言われています。新年には富を築けますようにという願いがあります。
その4
そばの形状が細く長いということから、細く長く毎日を過ごせるようにと、長寿を願っています。また、末永くよろしくお願いします という意味もあり、「引っ越しそば」としてもそばが使われます。
地域によって年越そばはどのような違いがあるのでしょうか
日本全国で、大晦日に年越そばはほとんどの地域で食べますが、それぞれ各地域によって年越そばに入れる具が違ったり形が違ったりもします。
具として各地域の特産物を入れたり、またそば粉を使わない麺だったりもします。
北海道・京都・・・にしんそば
温かいそばの上に、甘露煮のにしんをトッピングします。

岩手・・・わんこそば
一口ほどのそばを温かいそばつゆをくぐらせて小さなお椀に盛り付けます。
(約7杯で、ふつうのそば1杯分となります)
自分の年齢の杯数を食べると長生きできるという言い伝えがあります。
(日本三大そば)
新潟・・・へぎそば
つなぎに海藻の布海苔を使ったそばをへぎ(木片)と呼ばれる木の器に盛ることから、へぎそばと言われています。布海苔をつなぎに使うことで、独特の食感とのど越しを味わえます。
長野・・・戸隠(とがくし)そば
長野市戸隠地方のそばのことをいいます。戸隠地方はもともと山岳信仰があり、古くから修験者たちがそばもちなどを携行していたことから、そばが広まったといわれています。
そばの甘皮を取らずに挽いたそば粉を使います。薬味に地元の辛味大根である戸隠大根を使います。
(日本三大そば)
関東・・・おかめそば
おかめそばは江戸が発祥と言われています。
具をおかめを思わせるように並べるところから、おかめそばといわれるようになったということです。
福井・・・越前そば
温かいおそばに大根おろしをたっぷり入れます。
島根・・・出雲そば
奥出雲地方で、寒さに強く長く収穫できるそばが広まったところから、そばの産地と言われるようなったということです。
割子そばの形状が有名です。三段重ねとなっていて、別に薬味と出汁の容器がつきます。
(日本三大そば)
高知・・・鰹そば
そばに鰹をのせて、柚子の皮を擦って薬味にします。
鹿児島・・・さつま揚げそば
そばにさつま揚げをのせます。
沖縄・・・沖縄そば
そばという名称がつけられていますが、麺は小麦粉のみで、そば粉は入っていません。
年越そばは大晦日のどの時間に食べるのがいいのでしょうか
年越そばをいつ食べるのか、各家庭や地域によって、違っているかもしれませんが、本来は、大晦日のどの時間帯に食べるのが最もいいといわれているのでしょうか。
基本的には、大晦日であれば、どの時間帯でもいいといわれているようです。
1年間の災いを切って、新年を新たに願いをもって迎える行事ですから、年を越さないように注意しましょう。
年越寸前に食べるなら、除夜の鐘を聞きながら食べきり、「あけましておめでとうございます」という前には食べ終わっているように気を付けましょう。

年越そばに必ず入れたい縁起物の具があります
年越そばは、一年の災いを落とし、新年の無病息災を願うために、昔から日本人が大晦日に必ず食べていたものだということがわかりました。
これからも続けていきたい日本の伝統ですね!
この年越そばに入れる具についても、しっかりと縁起を担いだものがあります。縁起物の具を選んで使いたいですね。
ネギ
一年の苦労をねぎらうという意味があります。
また、年越そばが始まったころは、神官の禰宜(ねぎ)に通じるという意味もあったようです。
油揚げ
お稲荷さんには油揚げをあげます。金運や仕事運の向上の願いがあります。
鶏肉
鶏は朝早く鳴くので、新年早々声を上げる縁起のいい動物といわれています。
海老
海老は曲がっている形が、腰が曲がっても長生きできるという長寿を願うためによく祝い事に使われます。
大根おろし
大根おろしは、厄を落とすといわれています。一年の厄落としにぜひ食べましょう。
卵
卵の黄身は金色と重ね合わせて富を呼び込む縁起物と言われています。
ニシン
二親とかけて、子宝に恵まれるようにという願いをこめています。
鴨肉
「鴨が葱を背負ってくる」ということわざがあります。
良いことが重なるという意味から、縁起がいいといわれています。
紅白かまぼこ
紅白は祝い事の象徴として古くから使われています。
紅色は魔よけの意味があり、白色は身を清める意味があります。
ゴボウ
しっかり根を張るということから、安泰を願うといわれています。
そばについて豆知識
そばが日本で食べられるようになったのはいつでしょうか
奈良時代以前に大陸より伝わったといわれています。
当初は農民が食する雑穀の一つとして蕎麦粥として食べられていました。
麺として加工されるようになったのは、16世紀から17世紀といわれています。17世紀中ごろになって、江戸を中心に麺としてそばが広まったようです。

そばの栄養素
ビタミンB1、たんぱく質、ルチンがあげられます。
特に、ルチンは高血圧を予防する栄養素といわれています。
江戸時代から滋養強壮に効くとして、そばが食べられてきましたが、栄養素としてもそばは、健康的な食べ物といえます。
そばの種類とは
そばの名称はいろいろありますが、違いの説明は案外難しかったりしますね。
ここでは、そばの種類について説明いたします。
二八そば
二八そばとは、つなぎに小麦粉をつかい、そば粉8割、小麦粉2割で粉を混ぜ合わせます。小麦粉のつなぎが入ることで、そばが切れにくく、打ちやすくなります。
十割そば
十割そばは、つなぎを全く使わず、そば粉だけで、そばを打ちます。
そばの風味を十分に味わえるそばです。
田舎そば
蕎麦屋さんでよく見る田舎そばは、麺が黒くて太いですよね。
江戸時代に江戸のそばを都会のそばとしてその対極として田舎そばと言われたようです。
麺の太さは太く色は黒っぽく、そばの香りが強いのが特徴です。
更科そば
更科そばとは、江戸時代に寛政元年(1789年)に信州更科そばとして開いた店の名が発祥と言われています。それで江戸そばと言われていました。
麺の色は白に近い色となっています。更科粉といわれるそばの実を製粉して最初に出てくる粉を使っています。
藪そば
藪そばは、有名な蕎麦屋が藪の中にあったということから、藪そばといわれるようになったということです。
藪そばの特徴は、そばの実の甘皮が入り、麺の色が緑がかっています。そばつゆは濃い口の醤油を使っています。
砂場
砂場とは、大阪城築城の際に、素早く昼に食べられると大阪の砂場(砂利置き場)で数多く食べられたそばというところから、砂場という名前が伝わったということです。
砂場そばの特徴は、そばではなく、そばつゆにあり、甘さが強い濃いめのそばつゆとなっています。理由としては、砂場への出前というのがほとんどだったため、乾き目のそばのめんに合うように濃いめのそばつゆとしていたということです。
そば粉の違いとは
蕎麦屋で食べるそばの種類によって、そばの色が違ったりしますね。
乾麺でも違いがあります。その違いは、使われるそば粉にあります。
そば粉の種類は主に4パターンに分かれています。

一番粉
そばの実を製粉していくと、いちばん最初に出てくる粉のことをいいます。
更科粉ともいわれ、白っぽい色となります。味や香りは弱い感じです。
二番粉
一番粉がでてそばの実の胚乳の周りが削られて出てくる粉のことをいいます。
そばの風味や香りがよく出て、そばの栄養素もよく出ています。
三番粉
二番粉よりもさらに製粉していくと、そばの実の外側の黒い部分が削られていきます。
より栄養素が強く、香りも風味も強くなります。田舎そばによく使われます。
四番粉
最後に出てくる粉で、繊維が強くなり、舌触りが悪くなります。
香りは残るのですが、どちらかといえば、乾麺に使われることが多いです。
そばの種類や地域に伝わる製法によって、粉の配合が異なったりして、それぞれに独特な風味のそばが打たれます。
まとめ
年越そばにも、しっかりとした歴史や意味がありましたね。風味あるおいしいそばに伝わるうんちくを知ってから味あうと、また、そばの風味にも深みがでてくる感じがします。