12月は、その年の生活の営みを納めるしめくくりの月。日本だけでなく海外でも、年の最後を区切る行事が目白押しです。

12月の別名を師走(しわす)ともいうように何かと気ぜわしい中ですが、今年に感謝し、あくる年を恭しくお迎えする伝統的な行事がたくさんあります。

伝統的な12月の行事

12月の伝統的な行事は、神々に対し、健康や日々の糧を与えられていることへの感謝と、翌年もつつがなく生活できるようにとの願いを込めて行われるものが多くあります。

歳の市

いまでは各地で開催される「歳の市」ですが、もとは浅草で行われた12月の大市のことを指しました。無事に一年を過ごせたことの感謝や来年も良い年になるようにと願う観音詣とも重なり、その年のさいごの縁日で賑わいます。

江戸時代の末期あたりから羽子板が流行して市にたくさん並べられるようになり、現在ではすっかり羽子板市として有名になっています。

羽子板は、厄災を跳ね返すという意味をこめた縁起物で、特に女の子の成長を願うものとされ、誕生時に贈る風習がありました。

羽子板市では、歌舞伎の舞台姿を似顔絵にした羽子板が大流行した名残で、いまでも役者や芸能人などを模した豪華な羽子板がたくさん飾られます。

山まつり

山まつりは、毎年12月9日におこなわれる山間部での民間伝承による行事で山から木を切り出す営林・製材・炭焼き・大工などの関係者が山の神を祀るものです。

山まつりの日は山に入ってはいけないとされていて、この日に仕事をすると事故を起こしたり怪我をしたりと、災いがふりかかるとされています。

このため、いまでも地方の山で林業を営む人の中では、山まつり当日はどんなに納期が迫っていても仕事を休む習わしが残っています。それぞれの仕事道具に御神酒を供え、神事を行った後、直会(なおらい)という飲食の宴を開き、神様をもてなします。

針供養

針供養は、お世話になった道具を片付け、供養する風習「事八日」のうち、主に女性にとっての重要な仕事だった針仕事を納める行事で、西日本は事納めの12月8日に行うことが多いとされています。東日本は2月8日が多く、事始めに感謝する風習が残っています。

針供養では、折れた針やさびたり曲がったりした針を豆腐やこんにゃくといったやわらかなものに刺して感謝の気持ちを表し、神社に納めたり、川に流したりして、翌年からの裁縫の上達を願います。

「事八日」には妖怪や厄神が家を訪れるので身をつつしむほうがよいとされ、一日、針に触れないようにし、魔除けを置いたりしたそうです。

煤払い(すすはらい)

各地の神社では、12月13日ごろ煤払いという大掃除が行われています。

掃除によって部屋中を清め、年神さまをお迎えするためのお正月準備のはじまりでもあり、正月迎えやことはじめなどと呼ぶ地域もあります。また、正月飾りにする松を山から切り出す松迎えの行事をする地域もあります。

1年間の汚れを払い清めると、年神様がたくさんのご利益を持って降りてきてくださるといわれています。いまでも神社や仏閣では行事として残っています。

煤払いでは、はじめに神棚を、次に台所などの各部屋を、刈りとった笹竹の先に葉や藁を付けた道具でお清めします。お清めの後は、おもちや団子などを食べて祝います。

使用した道具の竹は年越しさせ、小正月の左義長(さぎちょう)の際にお焚きあげする風習もあります。

大祓(おおはらえ)/年越しの祓(としこしのはらえ)

大祓(おおはらえ)は、神話に登場するイザナギノミコトの禊(みそぎ)を起源とするもので、心身の穢れや、罪、過ちを祓い清めて清らかな身となって災厄を遠ざけ、清らかな気持ちで日々の生活を送ることができるよう、神々に祈る行事です。

大祓は、6月末日と12月末日に行われます。6月の大祓を夏越しの祓(なごしのはらえ)、12月の大祓を年越しの祓(としこしのはらえ)とも呼びます。

白紙で作った人形(ひとがた)で身体の穢れを祓い、川や海へ流したり、かがり火を焚いたりして、健康と厄除けを祈願します。

 

現代の12月の納めかた

現代社会における年の納めかたといえば、やはり仕事納めに関するものが多いでしょう。12月は何かを終わらせるたびに「◯◯納め」と呼んだりすることもよくあります。

一年間のしめくくりとしてすべての業務に区切りをつけることを「仕事納め」といいます。お盆休みと違い、煤払いのように大掃除などの行事を組み込んだりして、お清めのようなことをする職場も多いのではないでしょうか。

この仕事納めですが、よく似た言葉に「御用納め」があります。実はこのふたつの言葉は明確に使い分けられています。

官公庁では御用納め

御用納めは「官庁御用納め」ということもあります。江戸時代、幕府や藩の用命や宮中の公務を「御用」と呼んでいたことから、現在でも、行政機関の公務や宮中での仕事を御用といいます。

「御用納め」は、その年のすべての公務を片づける日、つまり「仕事の最終日」なのですが、実はこの日は法律によって定められています。

「行政機関の休日に関する法律」というのがあって、年末年始の休日を12月29日~1月3日までとすることが決められているのです。この期間は法律上、公務を行わないこととされているため、「御用納め」は最後に仕事をする日、12月28日を指します。(28日が休日にかかると前倒しになります。)

民間企業では仕事納め

一方、「仕事納め」は民間企業で使われています。一般の企業の年末年始は法律で決められてはいませんが、行政機関が休むと業務に支障が出やすいため、官公庁と休みを合わせる民間企業が多くあります。

「仕事納め」は名称が異なるだけで、仕事を片付ける最終日であるという点では「御用納め」と変わりはありません。

ただ、飲食業や旅行業、イベント関係などのサービス業に関しては、年末年始の長期連休にも仕事が止まらず、シフト体制を組みながら対応しているため、仕事納めの行事は変則的です。

 

海外の12月の過ごし方

欧米での12月といえば、キリスト教の行事、クリスマスが最も有名でしょう。日本でもクリスマス関連の様々なイベントがあり、とても華やかになります。

日本では、ハロウィーンが終わったらすぐに飾り付けされるなど、とても早くからクリスマス色でいっぱいになりますが、欧米のクリスマスは静かで落ち着いた祝い方が一般的です。

クリスマスは降誕祭とも呼ばれます。キリスト教で、神のひとり子がイエスという人間として生まれ、救い主(キリスト)となってくださったことを思い起こす日とされています。(イエス・キリストは「救い主イエス」という意味です。)

待降節(アドベント)

クリスマスは、降誕の当日だけでなく、4週間前から準備する期間がセットになっています。

教会では、クリスマス(降誕祭)の4週前の日曜日から、キリストの誕生を待ち望み準備する礼拝を行います。この期間をアドベント(待降節)と呼びます。

アドベントの礼拝では、4本のろうそくを用意し、毎週1本ずつ火を灯します。4本のろうそくすべてに日が灯ったクリスマスの日、クリスマス礼拝が行われます。

アドベント期間中は各家庭でも、いろいろなグッズを用意してクリスマスを待ちます。

  • アドベントクラウン(アドベントリース):4本のろうそくを立てたリースで、教会での礼拝のように1週間に1本ずつ火を灯して楽しみます。
  • アドベントカレンダー:24個の窓やポケットのついたカレンダーで、12月1日から毎日1つずつ中のお菓子を食べながら楽しく待ちます。
  • クリスマスツリーの飾り付け:冬でも緑の葉をつけるもみの木を永遠の命の象徴とし、知恵の実とされるりんごを飾り付けます。てっぺんの星は、東方の賢者をキリストが誕生したベツレヘムの地まで導いた希望の星の象徴といわれています。
  • 降誕セット(プリセピオ):馬小屋の飼い葉桶に寝かされたキリストとマリア、ヨハネ、贈り物を持って訪ねてきた3人の賢者、天使などを表したキリスト誕生の場面のミニチュアセットを飾り付けます。

降誕祭(クリスマス)

欧米のクリスマスは日本のお正月に近い感覚です。

24日のクリスマス・イヴは教会のミサに行くなど静かに過ごし、25日は家族や親戚と過ごすのが一般的。クリスマスのまま年越しを迎える状態となり、12月いっぱいか1月6日ごろまで祝うことが多いです。

イエス・キリストの誕生日が12月25日というのは、4世紀のローマの「殉教者帰天日表」が最古の記録とされていますが、地方によっては1月6日に祝われていました。

物語に記載された状況をみると季節が合わないなど、ほんとうの誕生日はわからないままなのですが、有力な説としては、ローマ暦の冬至が12月25日で、ここから日が長くなるため、太陽のような正義の誕生を象徴しているからではないかといわれています。

 

まとめ

12月は、日頃あまり考えることのない帰省先を意識しやすい月でもあります。50代ともなると何かとふるさとが気になったりしますよね。

地元で行われている年の納めかた、新年の迎えかたを思い起こし、あらためて感謝するのも大切なことです。

慌ただしい12月ですが、節目をつけるためにさまざまな行事があることをかみしめながら毎日を過ごしていくと、いつもよりメリハリのきいた年末となり、新年を迎える準備も充実してくるのではないでしょうか。