50代になると、ちょっとしたことで疲れやすくなったり、なかなか体調が回復しなかったりしませんか?「昔はこんなことなかったのに」と思うあなたに、手軽に体調を整えて活力を取り戻すのにおすすめの呼吸法をご紹介します。

貧血、疲れやすい、不規則生活の私でも続けられた呼吸法

実は、こういう私も、若い頃から貧血で疲れやすい体質の上に、不規則な時間で活動する仕事をしているため、体調をコントロールするのがとてもたいへんです。

なんとか今の状態を保っていられるのは、合唱を続けているからかもしれません。

といっても、熱心に練習しているわけではなくて、月に2、3回ほど声を出しているだけなのですが、発声練習のときにボイストレーナーの先生が体幹をしっかりとつかった呼吸の仕方を教えてくれるので、家でもときどき呼吸を整えるのに応用しているのです。

家でうっかり声を出すと迷惑がられますから(笑)、歌はちっともうまくなりませんが、いつでもどこでも静かにできる呼吸トレーニングにはずいぶんと助けられました。

呼吸と姿勢が健康によい理由 4つのポイント

ふだんは無意識に息を吸って吐く動作を繰り返していますが、少し呼吸を意識して背を伸ばし、大きく息を吸い込んでゆっくり吐き出す深呼吸をしてみると、なんとなく指先や足先まで空気が行き渡ったような気持ちになりますよね。

これは、気のせいではなくて、ある程度科学的な根拠のある話です。

少し呼吸と姿勢がどのくらい体の状態とつながっているかをみていきましょう。

酸素を取り込んで、細胞を新鮮にする

呼吸のメインの役割は、外から酸素を取り込んで、肺の中で二酸化炭素と交換する「ガス交換」を行うことです。

細胞を維持するためには、つねに新鮮な酸素を取り込む必要があります。このため、絶食だと1日くらいは平気ですが、息を止めることは数分もできません。

深く息を吸い込むことで、より多くの酸素をとりこむことができ、体の隅々まで酸素が行き渡って細胞の働きを良くします。

自律神経を整え、落ち着きを取り戻す

深呼吸をすると気持ちが落ち着くのは、長くゆっくり吸ったり吐いたりすることで、副交感神経が優位になり、自律神経が整うからです。

無意識の呼吸は浅くて、1分間に15~20回くらいですが、意識してゆっくりにすると、1分間の呼吸回数を6回くらいまで減ります。

このゆったりとした呼吸を5分以上繰り返すと、脳の中の伝達物質セロトニンが増え、ストレスを受け流しやすくなるともいわれています。

免疫力を上げて疲れにくくなる

深呼吸によって副交感神経が優位になり、セロトニンの分泌が増えることで、体の免疫力を高める効果も期待できます。

また、深呼吸により酸素を多く取り込んで細胞の新陳代謝が活発になります。これはロングブレスダイエットというダイエット法にも応用されています。

さらに、代謝が高まるとインスリンの分泌が効率的になるなど、体全体の調子を整えてくれる効果もあるといわれています。

血圧のコントロールや腸内活動を助ける

自律神経は内臓や血管の働きをコントロールしています。このため、深呼吸により自律神経が整うことで、おなかの調子が良くなったり、冷え性の改善なども期待できます。

また、深呼吸するときに体を伸ばして横隔膜が上下運動を繰り返すため、腸のぜん動運動などを活発にさせます。

さらに、姿勢を良くして深呼吸することで肺が広がり、肺の表面から血管拡張物質が分泌されて血圧が抑えられる効果もあるともいわれています。

浅い呼吸は万病の素!呼吸と姿勢をチェックしてみよう

体に良いことだらけの深呼吸、やってみて損はありませんよね。

まずは、普段どんな呼吸をしているか、ちょっとチェックしてみましょう。

呼吸の基本は鼻!口が開きがちな人は意識して閉じよう

はじめに、鼻呼吸ができているか、チェックしてみましょう。

鼻腔には、空気中の花粉やダストを取り除くフィルターの役目があります。鼻腔から喉につながる咽頭という場所で細菌やウイルスなどをブロックしているのですが、あらかじめ空気をろ過して負担を減らしてくれているのです。

ふだんから口が開きがちな人は、意識して口を閉じて鼻から息を吸い込むよう心がけましょう。

20秒息が続かない人は要注意!

無意識で呼吸していると、どうしても浅い息になってしまいます。

口からでも鼻からでもいいですが、ゆっくりと息を吐いてみてください。20秒以内になってしまう場合は、呼吸が浅くなっている可能性が高いといわれています。

猫背は呼吸が浅くなる。腹圧を意識して姿勢を伸ばそう

呼吸には姿勢も関係しています。ふだん猫背になりがちな人は、肺が広がりにくいので、呼吸が浅くなりがちです。

姿勢を伸ばし、息を吸ったり吐いたりするときにお腹をふくらませるようにしてみましょう。お腹の中から圧力をかける腹圧を意識することで、体幹を安定させていくことができます。

ため息をよくつく人は要チェック!実は呼吸が足りないのかも

浅い呼吸が多くなると、いつも交感神経が優位な状態が続いているといえます。そうすると体が副交感神経を優位にするため、ふーっとため息をつこうとします。

ため息が多くなったときは要注意。体が酸素を求めている印かもしれません。

呼吸は毎日3万回のエクセサイズ!おすすめの続け方 4つのポイント

呼吸法が良いことはわかったけど、教室に通うのもたいへんというあなたに、生活の中でちょっとずつ続けられる簡単な呼吸法をいくつかご紹介します。

空気をお腹まで入れ、ゆっくり呼吸:4-7-8のリズムでリラックス

まず、どんな姿勢でもいいので、ゆっくりと息を出し入れする方法をマスターしましょう。

覚えておくとよいのが、「4-7-8」のリズムです。

  • はじめに4秒かけて息を吸います。
  • その次にお腹に力を意識して7秒呼吸を止めます。
  • その後、8秒かけてゆっくり息を吐きます。

ゆっくりした呼吸のリズムをつくることで、副交感神経が優位に立ちやすくなります。寝る前にこの呼吸のリズムを意識すると、寝付きが良くなるともいわれています。

腹式呼吸に慣れるまでは仰向けに寝て練習しよう

肺は肋骨に囲まれているため、胸のあたりで呼吸する胸式呼吸は浅くなりがちです。これに対し、腹式呼吸は、みぞおちの下辺りにある横隔膜を下に広げるようにして、肺を大きくふくらませる呼吸法です。

ただ、はじめのうちは、むりやりお腹をへこませてしまうなど、少し腹圧がコントロールしづらいかもしれません。

慣れるまでは、仰向けに寝た状態でやってみると良いでしょう。仰向けだと自然にお腹がふくらんで空気が入ります。その感覚をつかみながら、下腹に意識を集中させてみてください。毎日やれば、体が覚えてきます。

座った状態で腹圧をコントロールしてみよう

お腹を膨らませる感覚がつかめてきたら、椅子に座って腹式呼吸にチャレンジしてみましょう。

  • 脚をにぎりこぶし2つ分くらい開いて座ります。
  • 両脚の付け根あたりのところに、指を置きます。
  • 置いた指を押し返すようなイメージで、お腹をふくらませ、「4-7-8」のリズムで呼吸します。
  • 吸うときも、止めるときも、吐くときも、お腹をふくらませたままにするよう意識します。
  • 全部息を吐ききったら、いったんお腹をゆるめます。

椅子に座ったままでできる呼吸法なので、テレビを観ながらでも、仕事の合間でも、気軽にちょこちょこと繰り返してみてください。

立った状態の腹式呼吸は「口すぼめ」で安定させてみて

腹式呼吸の感覚に慣れてきたら、さきほどご紹介した腹式呼吸を立った状態で練習してみましょう。

立った状態になると、急にお腹が安定しなくなるかもしれません。特に、息をゆっくり出し続けるのが難しいと思います。

ここで活用したいのが、口をすぼめた呼吸法。息を吸うときは鼻からが原則ですが、吐くときは口からでも大丈夫です。

口元をすぼめた状態で息を出すと、口もとに圧力がかかり、気道が安定しやすくなるとされています。少しずつ空気を出しやすくなるので、お腹のコントロールもしやすくなります。

 

ロングブレスで健康を維持しよう

腹式呼吸の感覚がつかめてきたら、ロングブレスに挑戦してみましょう。

ロングブレスとは、ひと呼吸を強く長く行うことで、体全体を引き締めて筋肉を鍛えたり、血流をよくしたりします。なかなか筋トレなどの運動ができない人でも、どこでも、簡単にできて、病気になりにくい体を作っていけます。

また、脳梗塞などの体がマヒした方でも、呼吸の方法を変えるだけの運動の仕方なので、リハビリの一つとして進めていくことができます。

ロングブレスを提唱してきた美木良介さんが、脳梗塞を患った元都知事であり、作家の石原慎太郎氏にリハビリとして提案をしたロングブレスの呼吸法で、石原慎太郎氏の病状が回復してきたという成果を報告する書籍も出版されています。


DVDでよくわかる!120歳まで生きるロングブレス [ 美木良介 ]

まとめ

寝ていても、椅子の上でも、電車の中でも続けられる手軽な呼吸法で、毎日新鮮な酸素を取り込み、細胞の中からアンチエイジングしましょう。

そのとき、ちょっと心がけてほしいのが、楽しく続けること。明るい気持ちをもつことが、体を美しく健康に保つ何よりのポイントです。ボイストレーニングが長く続けられるのは、楽しく歌いながら、自然とエクセサイズになっているからなのかもしれません。

みなさんも、ぜひ楽しい時間と呼吸法をセットにして毎日を過ごし、ストレスに強い健康な体をつくっていってくださいね!