秋のみのりが本格化する10月。この収穫を感謝する行事に、神嘗祭(かんなめさい)があります。
じつは神嘗祭は、1年のなかで最も重要な神宮の祭典とされています。
令和元年という節目の10月を、神嘗祭で身を引き締めて、感謝の中を過ごしてみませんか?
このページにはこんなことが書いてあります
神嘗祭は1年で最も重要な神宮の祭典
神嘗祭(かんなめさい)は、日本の生活に重要な影響を与える農作物の収穫「五穀豊穣」を感謝する祭典です。
神嘗祭では、その年の最初の収穫として天照大御神に新穀を奉納し、神の恵みに感謝します。
天照大御神を祀っている伊勢神宮では、神嘗祭を機に装束や祭器具が一新されるなど、「神宮の正月」ともいわれており、神嘗祭は年間の祭典のなかで最も由緒あるもののひとつです。
神嘗祭は収穫の感謝をいちはやく捧げるまつりごと
神嘗祭は、その年も無事に収穫できたことを感謝する「五穀豊穣の感謝祭」です。最初に収穫した稲の穂を「初穂」として、天照大御神(あまてらすおおみかみ)に捧げます。
これは、天照大御神が初穂を高天原(たかまがはら/たかまのはら)で食されたという神話に由来しています。
このため、伊勢神宮では、初穂を天照大御神に捧げる神嘗祭を執りおこないます。もともと旧暦の9月17日におこなっていましたが、新暦となってからは、稲穂の生育にあわせることもあり、毎年10月17日におこなうようになりました。
この神嘗祭を中心に、春から秋までさまざまな祭りが催されます。
- 御園祭(みそのさい)
- 神田下種祭(しんでんげしゅさい)
- 秋の抜穂祭(ぬいぼさい)
- 御酒殿祭(みさかどのさい)
- 御塩殿祭(みしおどのさい)
- 大祓(おおはらい)
神宮の年間の祭典は神嘗祭を中心に回っているといってもよいくらい、神嘗祭は重要な祭典なのです。
神嘗祭は神をもてなす祭典
神嘗祭の「嘗」に含まれる「旨」は、祈祷によって神の霊が降臨するさまを表しています。
その上に、祈りの場として尊ぶという意味の「尚」を重ねた「嘗」には、神のあらわれるところへお供え物をするという意味や、少しずつ味わう、触れるという意味があります。
神嘗祭では、立派な食事を意味する大御饌(おおみけ)という儀式と、幣帛(へいはく)を奉納する奉幣(ほうへい)という儀式を中心に、神を和める(なごめる)ための御神楽(みかぐら)などの行事が催されます。
つまり神嘗祭は、五穀豊穣の恵みを神にお供えし、もてなす祭典です。
そして、収穫の恵みをまっさきに感謝する意をこめて、神嘗祭では、天皇陛下が代表し、五穀の代表である稲の初穂を他の神々に先立つかたちで天照大御神に捧げるのです。
じつは宮中では毎月のように祭儀がある
天皇陛下がおられる宮中では、年間を通じて五穀豊穣や国家国民の安寧と繁栄をいのったり、厄災からのがれるお祓いをしたり、歴代の天皇や先祖を祀ったりする「宮中祭祀」という儀式が数多くおこなわれています。
宮中祭祀は、皇居内にある、賢所(かしこどころ)、皇霊殿(こうれいでん)、神殿(しんでん)を総称する「宮中三殿」や付属する神殿でおこなわれます。
神嘗祭は、宮中と伊勢神宮でおこなわれます。伊勢神宮では天皇陛下が遣わされた勅使による幣帛の奉納(奉幣)がおこなわれ、天皇陛下は宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)にて伊勢の神宮を遥拝(遠くから拝む意)されます。
神嘗祭と新嘗祭、大嘗祭の違いは?
神嘗祭と並び、収穫を感謝する祭典に、新嘗祭(にいなめさい)、大嘗祭(おおなめさい)と呼ばれる儀式があります。
神嘗祭は、10月17日に宮中と伊勢神宮でおこなわれ、その年の最初の収穫として天皇陛下の勅使が伊勢の天照大御神に初穂を奉納し、天皇陛下は宮中から遥拝します。
神嘗祭(かんなめさい・かんなめのまつり・かんにえのまつり)十月十七日に行う宮中行事。天皇がその年の新米を伊勢神宮に供える祭事。 pic.twitter.com/HgUtXvcYtm
— はせがわたかし (@KIMINOKAI_Tokyo) October 17, 2017
新嘗祭は、11月23日に宮中でおこなわれ、天照大御神をはじめとするすべての神々(天神地祇)に初穂を奉納したあと、天皇陛下みずからも食して収穫の恵みを感謝する祭祀です。このため、宮中恒例祭典の中では、新嘗祭が最も重要とされています。
つまり、神嘗祭は、諸神に先立って収穫の感謝を天照大神に捧げるもので、翌11月におこなわれる新嘗祭は、天皇陛下が天神地祇すべての神々に収穫を感謝されるというわけです。
なお、大嘗祭は、皇位継承の年におこなわれる新嘗祭を指します。
神嘗祭は15日から25日まで執りおこなわれる
神嘗祭は由緒ある大きな祭典で、関連する催しを含め、10月15日から25日まで、いろいろな祭儀がおこなわれます。
伊勢神宮の祭事は「外宮先祭」といい、内宮に先立って下宮で祭儀が行われる習わしとなっています。
祭事 |
外宮(豊受大神宮) |
内宮(皇大神宮) |
興玉神祭 |
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10月15日 |
御卜 |
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10月15日 |
由貴夕大御饌 |
10月15日(火)22:00 |
10月16日(水)22:00 |
奉幣 |
10月16日(水)12:00 |
10月17日(木)12:00 |
由貴朝大御饌 |
10月16日(水)14:00 |
10月17日(木)14:00 |
御神楽 |
10月16日(水)18:00 |
10月17日(木)18:00 |
初穂曳(関連行事) |
陸曳 10月15日(火) |
川曳 10月16日(水) |
伊勢神宮・皇居で行われる神嘗祭
興玉神祭(おきたましんさい)
神嘗祭の開催にあたり、伊勢神宮の内宮に鎮座される地主の神、興玉神を祀る祭儀。関係者一同がつつがなく催事を執りおこなえるよう祈ります。
御卜(みうら)
祭主以下の神職に罪や穢(けがれ)がなく、神の御心に適っているかをお伺いします。
由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)、由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)
大御饌(おおみけ)は「立派な食事」という意味で、海川山野からお供えものを整えます。
また、神田(しんでん)からの収穫のお供えとして、玄米のまま蒸した新米を土器に盛り、御餅をつき、白酒黒酒(しろきくろき)のお酒を醸して捧げます。
奉幣(ほうへい)
天皇陛下が遣わされた勅使により幣帛(へいはく)が奉納される祭儀です。
幣帛の「帛」は布を意味し、五色絁(いついろのあしぎぬ)、白絹、錦などを指します。また、送り文も添付されています。
懸税(かけちから)
また、天皇陛下は、皇居で育てられた初穂を神宮に御献進になられ、両正宮の内玉垣に奉懸されます。
内玉垣には「懸税(かけちから)」と呼ばれる全国の農家から奉献された稲穂もあり、あわせて捧げられています。
御神楽(みかぐら)
御祭神をなごめるため、御神楽が捧げられます。
伊勢神宮 神嘗祭の様子
2018年の伊勢神宮の神嘗祭をご覧になった方が撮影された映像をご紹介いたします。
伊勢神宮外宮の神嘗祭奉幣の様子です。神職の方々がこんなにも大人数で参進する姿は圧巻でした。#伊勢神宮 #外宮 #神嘗祭 #奉幣 pic.twitter.com/Oj9hwyUpZo
— Nakagita Yoshiaki (@nakagita) 2018年10月16日
神嘗祭と同時におこなわれる初穂曳
神嘗祭と同時に、伊勢神宮周辺でも初穂曳(はつほびき)という祭事がおこなわれます。
初穂曳は、その年に収穫された初穂を伊勢神宮の内宮へ奉納するお木曳きの催事です。お木曳きは、伊勢神宮の神殿で用いられる御用材を奉納する行事を指します。
なお、これまでは、神嘗祭を奉祝するため、全国から踊りの団体がやってきて踊りを披露し、地元で収穫された新穀を神宮に奉納する行事も行われていたのですが、2018年をもって終了しています。
初穂曳・川曳(はつほびき・かわびき)
お木曳きのソリに初穂を載せ、揃いの法被を着た神領民が木遣りをうたいながら五十鈴川を進み、伊勢神宮の内宮に曳き入れます。
【初穂曳】
— ガキ☀️お伊勢さん (@gaki_ise) 2017年10月16日
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2017.10.16 pic.twitter.com/KIRTZFJn4A
初穂曳・陸曳(はつほびき・おかびき)
お木曳き車に初穂を載せ、揃いの法被を着た神領民が木遣りを歌いながら市内を練り進み、伊勢神宮の外宮へ曳き入れます。
昨日は清めの雨の中での初穂曳でした。#伊勢神宮 #伊勢 #外宮 pic.twitter.com/ILREsFftKN
— 一山神社 (@issanjinja) 2018年10月16日
まとめ
夜間の祭儀は奉拝できませんが、日中の参拝時間内であれば、参道などから祭典のようすをみることも可能です。また、伊勢神宮周辺ではまちを挙げて神嘗祭を奉祝する行事がおこなわれるため、いろいろな楽しみかたができます。
年号が改まったこの秋は、姿勢を正して神々への感謝を捧げ、気持ちを一新させみてはいかがでしょうか。