長そでセーターなどを着る寒い時期に特に起こりやすい事故、「着衣着火」と「表面フラッシュ現象」を知っていますか?

「着衣着火」とは調理や焚火、仏壇にろうそくなどの火が着ている服に燃え移ってしまうこと。「表面フラッシュ現象」はふわふわした生地の表面を炎が走るような現象のことを指します。

あたらしい言葉ではなく元々あった言葉で、2016年に一度注目された言葉です。 

下着メーカーがパジャマを自主回収

それは下着メーカーのワコール社が一部製品の自主回収をはじめたからです。

2016年4月25日、下着メーカーのワコールが自社ブランドのパジャマ『ウンナナクール』に、ワコール社の品質基準を超える「表面フラッシュ」が発生するおそれがあることが判明したとし、事故防止の観点から2016年3月29日より『ウンナナクール』の一部製品の自主回収をはじめました。

販売枚数が多かったため、2019年の現在でも回収のおしらせが届いています。

パジャマを自己回収??とびっくりしますよね。理由は針の混入や肌のかぶれとかそういう理由ではなく、「表面フラッシュ現象」だというのです。

もし起こってしまうと大惨事になりかねない「着衣着火」と「表面フラッシュ現象」。知っている方でももう一度ここで予防についてと起こってしまった時の対応策を覚えておきましょう。

「着衣着火」の現状

まずは「着衣着火」の現状を知っておきましょう。東京消防庁によると「着衣着火」による火災事件は毎年例外なく起きているそうです。

平成30年度だけで35件発生し、そのうち4人が命を落としており、高齢者の被害者が多いことがわかっています。

一年でこの数ですので、統計ではかなりの人数が被害に遭っているのではないでしょうか。それだけどこででも誰にでも起こりうることなのです。 

「着衣着火」が起こりやすい状況は?

東京消防庁防災安全課の資料によると、「着衣着火」の原因としては、

1、コンロ
2、ろうそく
3、ライター

がトップ3となっており、そのうち1のコンロは全体の70%近くを占めています。圧倒的に食事の用意をしているときに起きてしまう事が分かっています。

また、発生時期は寒い季節が占めており、コンロによる「着衣着火」が起きている男女割合は、なんと女性が男性の2倍。年代は40代から80代の間で多く発生しているそうです。50代の私たちには ”対岸の火事” ではないのです。

**STOP!住宅防火シリーズ①火災から命を守ろう(令和元年10月発行)
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/bouka/data/tyakuityakka.pdf

「着衣着火」における「表面フラッシュ現象」とは?

「表面フラッシュ現象」とは、はじめに説明したように着衣に火が点き生地の表面を炎が一気に広がる現象のことを指します。

百聞は一見に如かず、その様子を動画でご覧ください。

 

このように炎が生地の表面をまたたく間に駆け上っていくわけですが、これは特に綿・レーヨンなどの素材で起毛を施した生地に注意が必要と言われています。起毛の生地は体積の割に面積が広く、空気も含んでいるのでとても燃えやすい状態となっています。

「表面フラッシュ現象」が起きやすい生地と条件

  • 綿やレーヨン等の易燃性(燃えやすい性質)のセルロース系繊維素材
  • ネル生地のように生地の表面に細い繊維がホワホワに起毛されていて、毛のあいだにすき間があり空気をふくみやすくなっている
  • まわりの空気、生地が乾燥している
  • 生地の表面が静電気でケバ立っている

動画ではかるくさーっと燃えたように見えますが、あれはハンガーにかけているシャツ1枚だから。実際に大事故になっているのは、スカーフから火が昇って髪の毛まで燃えたり、もっとふわふわの生地で瞬時に全身火だるまになってしまう例もあるそうです。

また炎はほぼ色がありませんので、明るい部屋では服が燃えているのに気づかず手遅れとなってしまいもあります。 

「着衣着火」を予防するには

このように大事故にもつながる「着衣着火」を未然に防ぐには、着衣に気をつかう必要があります。

  • 長めのそで口にひらひらとしたフリルやファー素材の服で火を扱わない
  • ガスこんろの上や奥の物を取るときなど衣服に炎が燃え移らないよう注意
  • 長いスカーフやマフラーをしたまま火に近づかない
  • 非可燃性のうでカバーをする
  • 火を使うときにはよそ見をしない

また、ふだんから、燃えにくい素材をつかっているエプロンを着用するなどを心がけておきましょう。

火が付いてしまったら

衣服に火が燃え広がってしまった時の対処法として、「Stop, Drop, and Roll 」という次の3つの手順の対処法があります。

■停止(STOP):走ったり、ウデを振ったりしない。バタバタすることは炎をあおぎ広がってしまいます。

■ドロップ(DROP):すばやく地面に転がり、手で顔をおおいます。 足を真っ直ぐに伸ばした状態で、できるだけ多くの体が地面に接触して炎を鎮めるようにします。 顔をおおう顔のヤケドを防ぐことができます。

■ロール(ROLL):地面の上で何度も転がります。 燃えている部分を消すことに集中します。 

まとめ:ふだんから気を付けよう

「着衣着火」と「表面フラッシュ現象」は火を取りあつかっている現場ではだれにでも起こりうることです。

常に火のある所では気をひきしめて注意をしておきましょう。

とくに「表面フラッシュ現象」は、とつぜん起こるのでびっくりしてパニックになってしまうこともあるでしょう。どんな現象なのか動画で知っておき、消防庁の情報を読んだりして、対処法をしっかりとアタマに叩き込んでおくことです。

高齢の親御さんには、父の日や母の日を機に、燃えない素材のエプロンや非可燃性のアームカバー、燃えにくい素材のパジャマなどをプレゼントするのもいいかもしれませんね。

備えあれば患いなし、この機会に「着衣着火」について家族で話し合ってみてはどうでしょうか。