50代になると、夫や自分の両親の体調に、少しずつ不安が募りますよね。
子どもにはこれから大きな教育費が必要なのに、さらに介護も・・・少子高齢化、晩婚化が進む現在は、こうした二重の負担となる「ダブルケア」が増えてくると言われています。
今はまだ実感がない方も、近い将来現実なるかもしれないダブルケアについて、一度考えてみてください。ここでは、ダブルケアがどのようなものか、どんな備えが必要なのかについて、簡単にご紹介します。
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ダブルケアって何? ダブルケアの状態になる背景とは
ダブルケアとは、広い意味では、ひとつの家庭の中で2人以上ケアしなければならない状態をさします。この中でも最近問題になっているのが、親の介護と育児のダブルケアです。
介護と育児のダブルケアが問題になってきている背景には、少子高齢化と、晩婚化による出産年齢の上昇があると言われています。
子育てが最も難しい時期に親の介護に直面する。さらには、きょうだいや親戚も少なく、たった一人で抱え込んでしまう。このような女性が増えているのです。
ダブルケアの実態 どんな状態になる?
子育てのまっただ中に親が要介護になり、ダブルケアに直面する夫婦は年々増えています。
育児といっても、必ずしも小さな子どもとは限りません。40代から50代に子どもを育てている世帯は、子どもが思春期の難しい年頃になっていたり、学費などで教育費が多く必要となっていたりするところも多いでしょう。
このとき親や義親は70代から80代で、立ち居振る舞いに介助が必要になったり、認知症の診断を受けたりして、世話や見守り、介護が同時期に発生する状態になってしまうことも珍しくありません。
いわゆる「団塊の世代」が75歳以上になる2025年以降には、団塊ジュニアと呼ばれる世代にダブルケアが襲いかかり、数年先には他人事でなくなる大きな問題といえます。
誰も助けてくれない!ダブルケアが深刻になる4つの理由
かなり深刻な問題をかかえているダブルケアですが、まだ社会からのダブルケアに対する理解が追いつかず、行政などの支援も低調です。
ダブルケアになるとどのような状況が発生するのか、身体面、精神面、情報面、経済面の4つのポイントから、ダブルケアの抱える問題点をみていきましょう。
ダブルケアの負担が女性へ集中し、どんどん疲れてくる
残念ながら、今でも育児と介護は女性の仕事という考え方をもつ人が少なくありません。
たとえ兄弟や親族がいても、育児は母親がするもの、介護は嫁(娘)がするものという価値観があたりまえとなっている環境だと、母親として、あるいは嫁または娘として、女性がケアをすることを前提とした形となり、女性ひとりにケアの負担が集中してしまう傾向にあります。
当然、身体的な疲れは相当なものになってきます。
ダブルケアで時間の余裕がなくなり、子どもや自分と向き合えなくなる
介護と子育てのバランスをとるのも難しくなります。
成人の介護はかなりの労力が必要です。ひとつひとつのケアに時間がかかり、自分の時間は無論、子どもの成長に応じた向き合い方を考える時間も心の余裕もなくなってしまうという問題もよく聞かれます。
さらに、夫の理解が不足するなど、ひとりで負担を抱える場合はとくに、悩みを共有できる場所がなく、精神的に追い込まれていく女性も少なくありません。
ダブルケアに関する情報が少なく、精神的に孤立化する
ダブルケアは近年クローズアップされてきた問題のため、経験者のノウハウや専門的に相談できるところも少なく、具体的に悩みを出せる機会がなくて孤立するケースも多くみられます。
ダブルケアの経験者からは、「誰も助けてくれない」という声もよく聞きます。悩んでいても、誰に相談してよいかわからない、相談しても常識的な話にされてしまって真剣に聞いてもらえないと、ひとりで抱え込んで孤立していく女性が多くいます。
ダブルケア費用がかさむ上に離職も迫られ、経済的に苦しくなる
介護と子育てを同時に引き受けると苦しくなるのは、身体的、精神的な負担だけではありません。ダブルで費用がかさみ、経済的な負担も大きくなってきます。
40代から50代は、子どもにも、また自分自身にもお金のかかる働き盛りの年代です。それにもかかわらず、ダブルケアへの理解が少ない会社が多く、サポートが得られないケースも多いのが現状です。
ダブルケアで思うように勤務できず、働きたいのに離職せざるを得なくなって、収入の減少で子どもの保険を解約したり、進路の変更を余儀なくされたりなど、教育に大きく影響することもあります。また、介護費用の捻出に苦しんで自力での負担が増えたりする家庭もみられます。
ダブルケアのサポートはあるの?ダブルケアを軽くする4つの方法
子どもは成長し、巣立っていく未来への希望がありますが、介護には出口の見えない不安が募ります。先がわからないから起きる不安には、少しでも心構えができるよう、情報をうまく取り寄せて、使えるものは使っていく柔軟性が欠かせません。
ダブルケアへの対処は、起きてから考えていては遅いのだということを、まず心得ておきましょう。「まだうちの家は大丈夫」ではなく、「うちの家もいずれ起きるかもしれない」と考えることが大切です。
ダブルケアに備えるポイントをいくつかご紹介しましょう。
転ばぬ先の杖!ダブルケアに関するサービス情報を早めに収集しておこう
もっとも重要な対策のひとつが、情報収集です。
現在はダブルケア認知がまだ低い現状がありますが、住んでいる市町村で、介護と育児に関する相談ができる窓口がどこになるかを探してみましょう。少しずつですが、ダブルケアをサポートする相談窓口も設置されるようになっています。
ダブルケア専門の窓口がまだない場合、自治体の窓口は育児と介護で縦割りになっていることが多く、情報収集が難しいかもしれません。まずは介護に関するサポートをしている窓口で、どんな支援制度があるのか聞いてみるのが現実的といえるでしょう。
また、地域によっては、ダブルケアの当事者(ダブルケアラーと呼ばれることもあります)が集まって情報や悩みごとを共有できるダブルケアカフェを開いているところもあります。ホームページなどで地元に支援団体がないか、確認してみることもおすすめします。
もしもダブルケアになったら? 家族や親族と事前に話し合っておこう
次に重要な対策は、ひとりで抱え込まないようにすることです。関係者全員が自分のこととして考え、行動できるよう、家族や親戚とあらかじめ話し合っておきましょう。
それぞれが抱える家庭の事情を明らかにしなければなりませんから、かなり話しづらいとは思います。でも、深刻な事態になってからの話し合いは、押し付けあいになって余計にこじれかねません。
お互いに余裕があるうちに、よい関係性をつくっておき、いざとなったときの状況判断や合意がしやすくなるよう、平穏な間に、もしもの場合の役割分担やケアの方向性、費用負担などについて、知恵を出し合うようにしましょう。
早めに声を上げられる関係を!職場の中で情報共有しておこう
ダブルケアでたいへんなときに収入が減ると追い打ちをかけられてしまいます。仕事上の迷惑をかけずにケアの時間を確保するため、職場との関係性はとても重要なポイントになります。
ダブルケアを乗り越えるためには、自分だけで解決しようとしないこと。そのためには、日頃から職場の中で積極的に自分の状況を伝え、なにかあったらすぐに声をあげて、周りに助けを求める関係をつくっておくことが大事です。
ダブルケアは、家庭によって状況がまったく違うので、必要とされる助けもひとりひとり違ってきます。具体的に何に困っているのか、どんな助けがほしいのかなど、情報を整理して伝えられるように、日頃からコミュニケーションをとるよう心がけましょう。
地域包括支援センター・子育て世代包括支援センターを活用しよう
ダブルケアに関する取り組みは、今後サポートや制度が充実してくる可能性があり、毎年のように新しい情報が出てくると思います。ぜひ、近くの地域包括支援センターを活用してください。自治体によっては、子育て世代包括支援センターとの連携を図っているところもあります。
地域包括支援センターは、介護される側への直接的な介護支援だけでなく、介護する側の支援も行っていて、専門的な助言や制度利用の案内など、サポートをしてくれます。
また、子育て世代包括支援センターは、2020年度までに全国展開することを目指して取り組みが進んでいる総合的な子育て支援の場です。子どもがまだ小さい場合のダブルケアに関する情報が集まってくる可能性もあります。
ひとりで抱え込んで仕事を辞めてしまったりして事態が深刻になる前に、地域包括支援センターなどの専門機関を訪ね、どんなサービスが利用できるのかを相談することをおすすめします。
まとめ
誰に何が起きるかなんて、誰にもわかりません。「もしダブルケアの状態になったら」と想像しながら、住んでいる地域や職場の情報をしっかり集めておきましょう。特に、コミュニケーションやネットワークは重要です。
また、周囲の人が同じような状況になることだって考えられます。お互いさまの気持ちをもって、いっしょに問題解決していけるよう、身近なつながりを強くしていくことが、これからの危機を乗り越えるための重要なポイントになります。
健康で穏やかな日常があるうちに、気軽に周囲の人と「もしも」の話をして、ダブルケアに備えておきましょう!