だるい。のどがいがいがする。息苦しい。微熱がある。眠れない。やる気が起こらない。心が重い。物事を悪いほうへ考えてしまう。
連日のようにコロナ関連ニュースを見たり聞いたりしていると、そんな風にカラダも心も反応してしまうそうなのです。
これを医学の世界では、類似感染と呼ぶそうなのですが、実際に医療の現場で活躍している心療内科医桑山紀彦医師に<新型コロナ>心理感染症候群について、お聞きしました。
このページにはこんなことが書いてあります
<新型コロナ>心理感染症候群とは?<心療内科医> 桑山紀彦医師にインタビュー
桑山先生 今日はお忙しい中、インタビューに応じてくださりありがとうございます。
いつも桑山先生のfacebookを拝見しているのですが、その中で、心理感染症候群という言葉を初めて聞いて・・・。
実際にエクレアの編集部スタッフやその周りの方も、ストレスや、カラダの不調を感じているという話を聞きます。新型コロナの心理感染症候群について、教えていただければと思います。
今日はどうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、桑山先生をご存じない方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介をお願いできましたら幸いです。
山形大学医学部および大学院を卒業して、1987年より医師をしておりますが、専門は「心的外傷」、トラウマです。
1996年からは「地球のステージ」というNGOを立ち上げ世界の色んな国々で国際協力を展開して来ました。現時点で渡航国は70カ国で、国際協力で支援してきた国は42カ国になります。
心理社会的ケアというモデルを使って世界の紛争地、災害の被災地での活動を続けていますが、今でもパレスチナと東ティモール、ミャンマーに事務所を置いています。
そして同時にそんな活動の中で得た映像や出逢いを音楽と大画面の映像に組み立て、「地球のステージ」というコンサートステージを展開しています。
もうじきその公演回数は4000回に近づいています。従って神奈川県海老名市に「海老名こころのクリニック」という小さな心療内科クリニックを開業していますが、年間では学校などで歌っている方が多い変な医者です。
変な医者って・・(笑)たしかにギターやバイオリン弾きながら歌って・・そういうお医者様は、ほかに見たことがありません。
地球のステージは、私も家族で何回も観て聴かせていただいて、映像や桑山先生の歌声にも、感動しましたが、多岐にわたる活動に心を動かされました。
もう4000回も公演されているのですね。
活動が再開されたら、また地球のステージも見に伺いたいと思っています。
ぜひ!!
今回の新型コロナ禍でステージが3月から秋口まで全て吹き飛んでしまいました。
でもやっぱり人は集い、歌い、抱き合い、触れあうものだと思うので「地球のステージ」公演がまた全国に戻って回復することを願っています。
はい。
そのときを本当に楽しみにしています。
さて本題なのですが、
新型コロナの心理感染症候群について
「心理感染」という言葉に、
ドキっとしたのですが、
どんな症状なのでしょうか?
まさに新型コロナに感染したときのような症状群があるのですが、それは全く自分の心が作り出してしまっているもので、疑似感染のような状態になっているものです。
息切れ、倦怠感、喉のつまり感、時には発熱まで・・・。
まるで新型コロナにかかってしまったような感じに襲われるのですが、実際にはPCR検査をするまでもなく感染はしていません。
まさに自分の心の中にある不安が作り出した「心理感染」と言えるものです。
テレビで繰り返しそういった新型コロナの症状群が語られ、その症状の末に感染が分かり入院やホテル隔離、あるいは近隣からの差別や理不尽な対応などに発展していったという情報がどんどん心の中に蓄積され、
「自分だけはそうなりたくない」と思うが故に、常に自分の身体の症状をスキャンしてモニターし続けている状態が続いています。
すると、この新型コロナ禍がなければ全然気にしないで見過ごし、いつの間にか無くなっているはずの症状群が、スキャン&モニターという心理的な働きによってすごく意識されるようになってしまい、
「あ、今日は喉がおかしい、新型コロナかも・・・」
「あれ?今日は身体がなんかだるい、新型コロナかも・・・」
という気持ちが増幅されます。
するともう関係念慮といって、「そうに違いない」という負のループがぐるぐる回り始め、ついには発熱までしてしまうものです。
人間は「知恵熱」といって、考えすぎたり集中しすぎたりすると実際に発熱することがありますが、そこへつながっていきます。
新型コロナはそんな人間の心のもろいところをついてきている厄介な存在だと言えるでしょう。
たしかに、
毎日テレビをつければ必ずコロナのニュースですし、インターネットでもいろいろな情報が流れてきます。
不安になったり、ストレスを感じたり・・・。
そういう気持ちが増幅されてしまうのですね。
もう一つ気をつけるべきなのが「ヒステリー球」です。
これはストレスや不安を抱えたときにでる、喉のあたりのつまり感です。
まるでパチンコ〜ピンポン球くらいのものが喉に詰まっているような感触なので「ヒステリー球」と呼ばれるのですが、けっこうな割合で出てきます。
それが新型コロナでも特徴と言われる「喉のつまり感」によく似ているのです。だから、一気に人々は不安になります。
でも実はそれは心の不安やストレスが作り出している「ヒステリー球」が正体であって、新型コロナの感染のためではないのですが、とてもよく似た症状です。
こんなに巧妙で厄介なウイルスはかつてなかったように思います。
ヒステリー球ということばは、初めて聞きました。喉のつまり感!感じたことあります。
ストレスや不安を抱えた時に出てくる症状のひとつだったのですね。
こうやって知っていると不安も和らぎますね。
新型コロナの心理感染症候群について、もしも、自分もそうかも‥と思ったとき、対策として、気を付けることや、できることはどんなことでしょうか?
まず大切なことは、心を切り替えていくことです。
もんもんと一人で悩んでいると、この「心理感染」はどんどん悪化していきます。
そんな時は思い切って親しい人に、
「ねえ、私コロナにかかったんじゃないかと思うんだけど・・・。」と打ち明けてみましょう。
もちろん言われた方もびっくりはしますが、
「そんなわけないじゃん!」
と言ってもらえるだけでもずいぶん人は安心するものです。
しかしその吐き出す相手が神経質な人だと、
「え〜、どうしよう、近寄らないで!」
とか、
「早くPCR検査のところに行かないと!」
といわれてしまい、心理感染は一気に悪化してしまいます。
吐き出す相手はしっかりと選びましょう!
心の中には「バスタブ」があります。
そこに「ストレス」や「不安」という名前の水がジャバジャバ入ってくるところを想像してみてください。
そのままでは心のバスタブはあふれてしまいます。それは新型コロナの心理感染にかかってしまうということです。
ではどうするといいのか。
それは「2つの“は“」。吐き出しと発散を実施していきましょう。
“吐き出し”はまさに「誰かに話すこと」。
バスタブの下についている栓をすぽん!と抜くようなイメージです。
するとストレス&不安の水は減っていき、軽い心に戻ります。語りにくいことに限ってどんどん話していきましょう。
でも先述の通り聴いてもらう相手は選ばなければなりません。
「よき聴き手」になってくれそうな人に吐き出すことが有効です。よき聴き手とは受容してくれる相手のこと。
つまり、
「そんなことないよ、大丈夫。心配いらないよ。」
「きっと心理感染ってやつだよ。二人で気晴らししようよ!」
という受け止めをしてくれる相手が大切です。
もう一つの
“発散”はまさに好きなことを思いっきりやることです。
でも今は自粛によってその道がふさがれがちなので、新型コロナとの闘いでは第1の“吐き出し”を常に心がけたいものです。
「2つの“は“」。
吐き出しと発散を実施ですね。
一人で抱え込まずに、信頼している人に話してみるって大事なのですね。
心のバスタブのお話は、すごくわかりやすいです!ストレスや不安がたっぷりのバスタブ・・いやですね。
これは心理感染した場合でしたが、逆に、心理感染しないようにするために、できることってどんなことでしょう。
それは決して「強い心を持つこと」ではありません。
「自分の心の弱いところをちゃんと知っておくこと」が大切です。
自分はどんな状況になると心が折れそうになるのか・・・。折れそうになるとどういうことを気にし始めるのか、よく知っておくことでかなりの予防ができるようになります。
つまり
「強くあれ」ではなく「弱さを知れ」ということが重要。
それが心理感染を防ぐ最も大切な方法です。
「自分はメンタル強い!」
と思っていると、今回のような巧妙かつ長期でストレスと不安を押しつけてくる相手には、ぽっきりと折れてしまう可能性が高いものです。
どんなにメンタルが強い人でもこの新型コロナの心理感染は巧妙に、そして執拗に迫ってきます。ぜひ自分の弱さを知ることで、相手に突き入る隙を与えず予防につなげていきましょう。
実はここには大切な視点があります。
それはこの心理感染には「打ち勝つ」「打ち負かす」という視点ではなく、新型コロナウイルスやそれによる心理感染と「共存する」という視点が大切だと言うことです。
ウイルスは撲滅しようとか、打ち負かそうとすると逆に力を強め特異に変化する傾向があります。
この新型コロナ禍との闘いは、
この厄介な存在と「どう付き合っていくか」が鍵だと思うのです。
それはすなわち
「心を強くして心理感染を防げ」ではなく
「自分の心の弱さを知って、この心理感染とどう付き合っていくかを考えよう」の方が大切であり、より有効だと言うことです。
世界で起きる物事の決着は勝ち負けではなく、悔しいけれど相手の存在を認め、それとどう共存するかにかかっているように思います。
それは「心のあり方」もまた同じ。
心理感染という存在を認め、それとどう付き合っていくかを考えたときに、実はこの問題の解決につながっていく可能性があると思うのです。
ぜひ、
「自分を知る」と言うことを通してこの厄介な心理感染を最小限に食い止めていく方向をみんなで考えていきましょう。
はい。自分の心の弱さを知って、打ち負かすのではなく、認めて共存する・・。
強い心を持つことより、自分の弱さを受け入れる。
つまり、弱い自分もそのまま認めちゃってOK!ということですよね。
肩に入っていた力が抜けていく感じがします。
いつかこの新型コロナ禍という過酷な体験が、自分や社会をより強く変えていくきっかけになったと言える日が来る事を願っています。
今はまだ渦中にあるので、とてもそんな余裕はありませんが・・・。
私は2011年3月11日、東日本大震災の津波の直接の被災者です。
あの時は宮城県名取市の海沿いで開業して津波の直撃を受け、多くのものを失いました。
絶望の中うつむいて、しばらくは自分のつま先しか見ることはできませんでした。頭を上げて少しの「先」をみることも恐ろしくてうつむき続けるしかなかったのです。
しかし
仲間を得てゆっくりと時が過ぎていくと、少しずつ顔を上に上げることができていきました。ずいぶん時間がかかりましたが・・・。
そして9年が過ぎた今、
「津波のおかげでここまで来られた」と思えるようになりました。
自分のこの変化は今でも不思議に思います。
つまり
この世界、社会、人生において起きる出来事には全て意味があるのだと思います。
それはきっとこの新型コロナ禍さえも・・・。
いつかそんな「意味」をみんなで確認しながら、ポスト・コロナの世界をより良くするために知恵と勇気を出し合える日が来ることを信じたいと思います。
いつか皆さん「地球のステージ」公演でお目にかかりましょう!
桑山先生、今日はありがとうございました。
ひとりひとりが、自分に寄り添って、気持ちを整えることって大切なのですね。
気持ちを整えるって簡単なようで、現状を見てしまうと、難しく感じてしまうこともあると思いますが、無理せずに、家庭内が笑顔になるように、せめて私は、笑顔の出し惜しみはしないようにしようと思いました。
そして、いろいろなうわさや、ニュースで心が沈んでしまった時も、偽物の感染をしないように、だれかに話したり、気持ちがアップするような、アイテムも準備しようと思います。
それでも心細いときは、桑山先生のクリニックにおじゃましに行きます!
お忙しい中、ありがとうございました。
<新型コロナ>心理感染症候群の類似感染の症状や、対策、心構え
今日は、<新型コロナ>での心理感染症候群の類似感染の症状や、対策、心構えなどを、心療内科医の桑山紀彦医師にお聞きしました。
だるい。のどがいがいがする。息苦しい。微熱がある。眠れない。やる気が起こらない。心が重い。物事を悪いほうへ考えてしまう。
連日のようにコロナ関連ニュースを見たり聞いたりしていると、そんな風にカラダも心も反応してしまうのですね。ヒステリー球という言葉も初めてでしたが、うんうんと納得でした。
心理感染しこんな症状になっても慌てずに、自分の気持ちを受け止めて、「2つの“は“」。吐き出しと発散をしていきたいと思います。
*海老名こころのクリニック
心療内科・精神科・内科
- 院長名 桑山 紀彦
所在地 〒243−0436神奈川県海老名市扇町7番7号